政治家と政治屋の違い(下)

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 政治屋は次の選挙を考え、政治家は次の世代を考える──
 
 政治屋は、本来なら政治家というべきところを蔑んで言う表現となっている。

 一般には、〇〇家というと何だか偉そうなイメージがあり、〇〇屋というとそれよりは軽んじた感じがある。
 土建屋、写真屋、本屋、瀬戸物屋、チンドン屋、植木屋、印刷屋、花屋、質屋、一発屋、飯屋・・・
 建築家、写真家、小説家、陶芸家、音楽家、園芸家、版画家、華道家、銀行家、起業家、料理家・・・

 言葉狩り華やかし頃、八百屋、魚屋、肉屋という〇〇屋といった言葉が、職業を蔑んだ表現、職業差別に当たるという意見があった。
 それぞれ、青果店、鮮魚店、精肉店と言い換えられたが、絵本や児童書では読者の子どもには何のことかわからない。
 それで、八百屋さん、魚屋さん、お肉屋さんと、さん付けすることで問題を回避した。

 「おい、八百屋!」とか言えば確かに蔑んだニュアンスかもしれない。
 しかし日常会話で、「八百屋で人参買ってきてくれる?」と使われる時、誰も八百屋を蔑んでなどいない。
 〇〇屋という場合、そこに蔑みの意味が込められて初めて差別表現になる。

 家と屋の漢字の意味については、家は宀(やね)+豕(ぶた)で家畜に屋根を被せたさま、屋は上から覆いをして出入りを止めた意、つまり屋根で覆った家を表している。
 もっとも〇〇家で使われる場合は、家族又はその住居の意味が転じて、専門の学問・技術の流派又はそれに属する者のこと。
 一方、〇〇屋で使われる場合は、本来は家の屋根のことだが、日本で特有の意味が与えられ、その職業の家を表す言葉となる。

 字義からいえば、二世・三世政治家はまさしく政治屋ということになる。
 大辞林は次のように説明する。
  
せいじか【政治家】
①政治を行う人。政治を担当する人。
②政治的手腕をもつ人。駆け引きがうまい、事を巧みに処理する能力をもつ人。

せいじや【政治屋】
私利私欲のためにその立場を利用し、公的な責任感に欠けた政治家を軽蔑していう語。

 statesman(政治家)とpolitician(政治屋)の違いについては、ブリタニカ国際大百科事典の説明がわかりやすい。

政治家
政治活動に従事する人間。政治家はしばしば politicianと statesmanとに分けられる。イタリアの政治学者 G.モスカは,前者を「統治システムにおける最高の地位に達するのに必要な能力をもち,それを維持する仕方を心得ている人物」と定義し,後者を「その知識の広さと洞察力の深さによって,自分が生きている社会の欲求をはっきりと正確に感じ取り,できるだけ衝撃や苦痛を避けて,社会の到達すべき目標に導く最善の手段を発見する方法を知っている人」と定義して,両者を区別している。 M.ウェーバーは,政治家の資質を責任感,情熱,洞察力の3つに求めた。

 わかりやすく書けば、次のようになる。

 政治屋は、首相の地位に上りつめるための権謀術数に長け、首相の座を維持し続ける方法を心得ている者。
 政治家は、広範な知識と深い洞察力によって国民が求めているものを正しく認識し、国民にショックや負担をできるだけ与えないようにし、日本が進むべき未来に向けて最善の政策を立てられる人。
 政治家に必要なのは、責任感・情熱・洞察力の3つである。

政治家と政治屋の違い(上)

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 政治屋は次の選挙を考え、政治家は次の世代を考える──

という言葉があるんだそうだ。
 googleってみたら、国会図書館のレファレンスに質問に答える回答が載っていて、19世紀のアメリカのJames Freeman Clarkeの言葉ではないか、と書かれている。
 英語では、"A politician thinks of the next election and a statesman thinks of the next generation." と韻まで踏んでいる。

 クラークについては、牧師だといわれるが、同時期の上院議員James Paul Clarkeだとする説、またSamuel Clarkという18世紀のイギリス人宗教家、ないしは同じ18世紀のイギリス人神学者Adam Clarkeだとするものもあって、要はよく分かっていない。
 よく分かっていないが、結構古くからある言葉らしい。

 なかなか上手いことを言うが、振り返ってこの言葉を当てはめてみると、自己都合どころか勘で衆議院を解散した我が国の首相を筆頭に、保身のために異議を唱えない与党議員(一部には、異議を唱えた人もいたが)、同じく保身のために小池百合子さんが立ち上げた新党に雪崩れ込んだ野党議員と、この国にいるのは政治屋ばかりだと思うと、暗澹たる気持ちになる。

 この暗澹たる気持ちはもう何十年と続いているのだが、100年以上前から政治屋ばかりが蔓延っていたのだと知ると、妙に気休めになるから不思議だ。

 さて、政治家と政治屋。 
 クラークさんの言葉では、statesmanとpoliticianという使い分けがされている。
 プログレッシブ英和中辞典には次のように説明される。

states・man
(リーダーシップをもった)政治家.

pol・i・ti・cian
(政党)政治家;政治屋, 策士. (米)では私利・党利を目的とする「政治屋」を意味することが多い;
(英)では下院議員をpolitician, 特に権力のある下院議員・閣僚をstatesmanという.

 イギリスの議会制度は二院制で、下院の庶民院と上院の貴族院にわかれる。
 下院は国民選挙によって選ばれるが、上院は公選ではなく原則終身で無報酬となっているため、次の選挙を考える必要がない。

 上記以外の語義として、statesmanには政治家の能力・手腕という意味があるのに対し、politicianには行政官・出世主義者・権力主義者という意味があることから、この方が両者の違いがわかりやすいかもしれない。(続く)

不倫はいつ始まったのか?(下)


行きずりの不倫を描いて小説も超人気
となった、ポジティブな不倫ドラマ

デヴィッド・リーンの名作『逢びき』。
W不倫だが一線は越えない(1945)

 女性議員の不倫ブームの話の3回目。
 のんびり不倫について書いていたら、降って湧いた衆議院解散総選挙。
 国会議員も不倫なんかしてる場合じゃない・・・
 
 不倫は日本で作られた明治以降の言葉で、もともとは「人倫にはずれること」、倫理にしからずのことだった。
 男女の関係で使われるようになったのは近年のことだ。

 倫は「人+侖」の会意兼形声文字で、侖は短冊の竹札を集めてきちんと整理するさま、人偏がついて、倫はきちんと並んだ人間の間柄を意味する。
 同列に並んだ仲間、人間同士のきちんと整理された関係、筋道、きちんと整った順序の意味となり、「人の守るべき筋道」の意味で使われることが多い。

 従って、打消しの不がつく不倫は、人の道に背くこと、人倫にはずれることになる。
 ちなみに、漢語の不倫には、程度・種類などが同じでない、という意味がある。

 男女の間で人の道に背けば、それも不倫には違いないが、既婚者が他の異性と肉体関係を持つことという最近の意味でいえば、かつては姦通や不義密通という言葉が使われた。

かんつう【姦通】
①男女の不義の私通。②有夫の婦人と夫以外の男子とが私通すること。

しつう【私通】
男女がひそかに情を通ずること。密通。(広辞苑)

 時代がかったというか、明治・大正・昭和の香りのする言葉だが、戦前までは姦通罪があって、江戸時代には死罪、明治からは禁錮・懲役の重罪とされた。
 旧刑法では、有夫の女子と夫以外の男子とが姦通した場合のみが姦通罪の構成要件とされ、夫が妻以外の未婚の女子と姦通しても罪には問われなかった。

 男女不平等の姦通罪は戦後の昭和22年に廃止され、それ以降は姦通しても罪に問われることはなくなった。
 もちろん、民法上の損害賠償請求は免れない。

 姦通も人の道に背くという点では不倫だが、広く人倫にはずれることを意味する不倫とは同義ではない。
 もっともワイドショーや週刊誌が使う不倫は、人倫にはずれることではなく、既婚者が、あるいは相手が既婚者との不義の私通を指していて、姦通と同義といえる。
 山尾志桜里さんの場合は戦前でいえば姦通罪で、今井絵理子さんは姦通罪には問われないが姦通①の男女の不義の私通に相当する。

 不倫ではなく、姦通だとかダブル姦通という言葉を使った方がすっきりする。
 姦通が直截的だというなら、女性議員には不義密通・ダブル不義密通と言ってあげた方が、そこはかとない情緒があっていいかもしれない。



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