数十年に一度の台風がもたらしたもの(上)

 日光の続きを書く予定だったが、土曜から日曜にかけて、台風19号が東日本に大きな爪痕を残して通り過ぎたので、そのことを書くことにする。

 台風が接近した金曜頃から、狩野川台風級だと気象庁が警告を出し始めた。そして数十年に一度の降雨量をもたらすという大雨特別警報が各地に出された。
 狩野川台風は1958年9月27日未明に神奈川県に上陸したので、61年ぶり。確かに数十年に一度の大雨をもたらす台風だったわけだ。
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出典:国土地理院(三点とも)

 狩野川台風については、2007年9月7日「東京物語─台風と大水の今昔」に書いたことがある。幼かった頃の記憶だが、今でもはっきりと覚えている。
 東京は今ほど下水道が整備されてなく、街には縦横に排水路が走っていた。
 現在の東京には川や堀がほとんどないが、地表にないだけで地下には下水路が縦横に走っている。
 半世紀前の東京を知っていれば、東京は水の都で、ひとたび大雨が降れば川や堀、沼や池が溢れ、道路は水浸しとなり、道はぬかるみ、あちこちに水溜りが残るのは当たり前の光景だった。

 東京の治水は江戸時代に始まる。
 江戸の始め、利根川は東京湾に流れ込んでいて、毎年のように洪水を引き起こしていた。その利根川の流路を東に変え、銚子から直接、太平洋に流れるように大工事を行ったのは徳川家康だ。
 江戸の町づくりのために、神田川の流路も変えられている。浅瀬を埋め立てたり、堀を掘ったりしている。

 治水は明治以降も続いた。
 現在の荒川下流は明治から大正にかけて開削されたもので、私が子供の頃は荒川放水路と呼ばれていた。北区の岩淵水門から分流する隅田川が、かつての荒川だった。
 江戸川河口部に開削された江戸川放水路も人工河川、新中川も以前は中川放水路と呼ばれた人工河川だ。

 左上は、明治期の低湿地で明治17~19年の様子を示している。左中の現在の地図と比較すると、先に挙げた荒川放水路(現在の荒川)、江戸川放水路、中川放水路(現在の新中川)が、まだ開削されていないのがわかる。
 照合のために両図を重ね合わせたものを、左下に載せた。

 明治期の低湿地の青色が河川・湖沼・海面、青色の横線が旧河道、黄土色が水田・田・陸田、茶の破線が堤防。
 水色は干潟・砂浜、薄桃色が砂礫地(青と重なっている部分は薄茶色になっている)、桃色は泥地。
 現在の東京東部のほとんどが低湿地、つまりは荒川などを含む、旧利根川の氾濫原だったことがわかる。

 数十年に一度の大雨は凌げても、百年に一度、二百年に一度の大雨が降れば、積み上げてきた人間の知恵と努力を嘲笑うように、東京の河川も大氾濫するかもしれない。

 氾濫原にある実家に住む兄は、河川の氾濫に備えて不安な夜を過ごしたという。
 地方都市に住む従兄の家は、未明の河川の氾濫により孤立し、ヘリコプターで救助された。
 今回の台風19号は、治水によって見えなくなっていた自然の恐怖を再び思い出させてくれた。(つづく)

初秋の奥日光を訪ねて(2)


木製テーブルが設置された千手ヶ浜

 7、8月はせわしなく過ぎていき、9月に入っての夏休みだった。
 もっとも、ここ数年は夏に避暑に出かけることもなくなった。どこへ行っても混むし、ホテル代も高い。
 暑い夏は冷房の効いた自宅で過ごし、少し涼んでから日光に行く。それが近年のパターンになった。

 9月中旬に中禅寺金谷ホテルに宿をとった。小田代原の草紅葉が見られるかもしれないと思ったが、少し早かったようで、色づき始めたばかりだった。
 そういえば、周辺の草紅葉はお彼岸の頃から10月初めにかけてだった。以前、9月末に奥日光に行った時が盛りだったのを思い出した。
     
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森の奥のひっそりとした西ノ湖
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シロヨメナの群落。木には鹿の食害を防ぐテープが巻かれている
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山の斜面の子猿たち

 低公害バスから車窓を眺めていると、草紅葉の様子が見える。天気も良かったので、小田代原をパスして千手ヶ浜まで行くことにした。
 バス停から砂浜まで歩くと波が立っている。思ったよりも風が強い。
 千手ヶ浜には木製の休憩用のテーブルとベンチが4つほど置かれていた。観光地の公園などによくあるやつだ。
 
 設置されてそれほど年数は経っていない。しばらく千手ヶ浜に来てなかった。
 記録を調べると5年ぶりだったが、その時は砂浜の倒木に腰かけて弁当を食べた記憶があるので、休憩所は新設されたものなのだろう。

 昼食を終えて、千手ヶ浜から西ノ湖へ。千手の森遊歩道は倒木が多い。二十年前に子供と歩いたときは鹿の群れを見つけたが、食害用の防護ネットを巻きつけた木ばかりで鹿の姿はない。
 西ノ湖で休憩してからバス停に行く道で猿の群れを見つけた。今年生まれたばかりの子猿もいる。

 それにしてもこの森は鹿の食害がひどい。樹皮だけでなく幹を白くなるまで削って食べていて、木が枯れて倒れた跡があちこちにある。
 この様子を見ると、すっかり鹿は森にとっては害獣になってしまっている。
 自然や森林を破壊するのは人間ばかりではない。鹿にも、自然を守れと言いたくなる。


初秋の奥日光を訪ねて(1)


草紅葉の始まった戦場ヶ原

 今年も奥日光にやってきた。
 昨年はどういうわけか中禅寺湖のホテルの予約が取れなかったが、今年は8月に入ってからでも取れた。
 2008年11月の日光プリンスホテルに続き、2015年末には日光レークサイドホテルが閉館。中禅寺湖周辺に手頃なホテルが少なくなった。

 日光はもちろん、奥日光の旅行客の数は増え続けている。
 昨年、平成30年に日光市を訪れた観光客は12,316,263人だそうだ。どうしたら、こんなに正確な数字が出るのかわからないが、とにかく2年連続で増加したんだそうだ。
 もっとも宿泊者数は3,307,191人で前年より減少。つまり日帰り客が増えている。
 増加の要因は、2016年の英国大使館別荘記念公園のオープンと分析されている。

 宿泊者数のうち外国人は92,968人。
 こちらも前年より減少していて、おそらく外国人観光客も日帰りが増えているのだろう。
 東京から片道2時間。日光山内の社寺を見るだけなら1日あれば事足りる。

 日光山内は外国人だらけで、周辺にはバックパッカー向けの宿泊施設も多い。
 昨年行方不明になったフランス人女性が宿泊していたのも、山内の南の民家が集まる一角。一年が経過したが、未だに手掛かりが得られていない。
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ウメバチソウ
      
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ゴマナ
      
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リンドウ



 奥日光に足を延ばす外国人も増え続けていて、今年は戦場ヶ原で良く外国人に出会った。
 木道を歩くと「コンニチハ」と声をかけてくる。日本のハイキングの慣習にもすっかり慣れた様子で、声のかけ方も自然。
 ともに日光の自然を楽しんでいるというだけで、親近感がわいてくる。
 毎年戦場ヶ原には出かけているが、外国人から挨拶されたのは今回が初めてだ。

 草紅葉には早かったが、戦場ヶ原にはまだ秋の花が咲いていた。
 ウメバチソウ、ゴマナ、リンドウ・・・。
 外国人の中には、ガイドを連れて戦場ヶ原に咲く花の説明を熱心に聞いている人たちもいる。




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