親知らずの話(12)新たな試練と後日談

 今年も師走になったと思う間もなく、もう1週間が過ぎようとしている。きっと気がついた時には、除夜の鐘を聞いているんだろうな・・・

 年末といえば年忘れ、忘年会シーズンである。年忘れというのは辞書にも載っていて、「年の暮れに一年間の労苦を忘れること。そのために催す酒宴、忘年会」とある。
 もっとも俺の場合は、昔から忘れっぽくて、最近はもっと物忘れがひどくなって、忘年会なんて必要ないんだけどな・・・やっぱ、歳のせいかな。
 忘年会では、今年は何があったっけ? と、一生懸命思い出そうとしたりして、それじゃ、年忘れじゃないよな・・・

 そういえば、このブログでも物忘れがあった・・・

 今年の春から延々と親知らずの抜歯の話を書いてきた。
 御茶ノ水にある歯科専門の国立病院で、上下4本の親知らずを無事抜き終わったのが、夏の終わりの9月7日。
 最後に抜いた左上の親知らずの隣の奥歯の根元が虫歯になっていることが判り、むし歯科で診察を受けたのが12日。

 「奥歯の根が、浅いですが虫歯になっています。位置的に根元なので埋められないかもしれませんが、まだ抜歯後の歯茎が締まっていないので、処置は1ヵ月後にしましょう。今日はレントゲンを撮って終わりにします」
 そう言われたのが9月12日だった。

 根元なので埋められないかもしれない・・・埋められないとどうなるんだ? 埋めて欲しい・・・
 親知らずの話は終わったが、1ヵ月後に、新たな試練が私を待ち受けることになった・・・

  9/14「親知らずの話(11)最後の親知らずと新たな試練」で、そこまで書いた。そして、続きを書くのをすっかり忘れていた・・・
 親知らずの話ではないので、書く必要もないかもしれないが、でも何となく尻切れトンボのようにも感じるので、後日談を書くことにする。

 ちょうど1ヵ月後の10月12日、私は久し振りに御茶ノ水にある歯科専門の国立病院を訪ねた。
 奥歯の根が虫歯になっているけれど埋められない・・・埋められないとどうなるんだ? という不安を抱きながら、むし歯科の診察台に座ると、前回の医者がやってきて診察を始めた。
 虫歯になっているという、左上の抜歯した親知らずの隣の奥歯を擦っていたが、5分も経たないうちにこう言った。

 「虫歯じゃないですね。黒く汚れていただけですね。
 治療の必要はありません・・・」

 「・・・」

 虫歯じゃないという結果は、それはそれで喜ぶべきだろうが、何となく気が抜けた。
 俺は、わざわざこの診察台まで、何しに来たのだろう・・・
 担当医も、これで帰すのはさすがに気が引けたのか、

 「歯のクリーニングをしましょう」

と言って、助手の女性に後を任せた。

 いや、なんとも呆気ない幕切れ

 ところで、親知らずを抜いた跡というのは、どうにも厄介だ。
 抜いた跡というのは、ぽっかりと穴が空いているわけで、親知らずが生えていた時の状態によっても違う。右下はタカラガイのように、歯茎の真ん中に裂け目が残っているが、左下は裂け目が内側にあって、歯茎の肉が蓋をしたような状態になっている。左右上は縦穴が開いた状態・・・

 上はともかく、下は親知らずの穴に食べ滓が溜まりやすく、お陰でうがいや歯磨きを頻繁にするようになった。
 もっとも歯磨きに関しては、親知らずがなくなって歯ブラシが奥まで届くようになったので、丁寧に磨けるようになった。それでも、左よりも右の方が磨きにくく、顎の骨が左右で非対称になっていることを発見して、妙に納得したりする・・・
 まあ、どうでもいい話だ。

 あっけない幕切れの後、実は現在も歯医者に通っている。

 10年前に虫歯を治療した時、乳歯の抜歯以来、40年振りくらいに歯医者を訪れた私は、されるがままに治療された。
 詰め物も保険でやってくれたので、いわゆる銀歯と呼ばれる金銀パラジウム合金だった。それはそれで安く済んで良かったのだが、歯磨きのたびに奥歯で鈍い光を放つ金属が気になっていた。

 まるで、獅子舞の獅子の歯みたい・・・

 私は口が大きい。しかも大口を開けて笑う。大口を開けるたびに銀歯が気になって、思い切って笑えない・・・
 そのうち、孫が生まれて、「おじいちゃんの歯、獅子舞の獅子の歯みたいで、怖い!」とか言われたくないよな・・・
 子どもが小さかった頃に獅子舞を見せたら、怖くて泣き出したもんな・・・
 俺が大口開けて笑って孫が泣き出したら、子どもや連れ合いに、

「お祖父ちゃんは獅子舞の獅子!」

とか言われかねないよな・・・
 と、子どもが結婚もしていない今から、将来の心配をしてしまう。私は心配性の上に、気が早い・・・

 それで、8/29「親知らずの話(9)親知らずと虫歯の根の治療」に書いた虫歯の根の治療の専門医に、治療が終わった時に、以前治療してもらった虫歯の詰め物を替えたいという話をしてあった。
 医者が言うには、現状で問題ないのであまり奨めないが、どうしてもということなら大学病院の医師が独立開業しているクリニックを紹介してくれるということだった。

 虫歯の根の治療では、コンポジットレジン(composite resin)を充填してくれた。
 レジンというのはプラスチック樹脂のことで、コンポジットレジンというのはセラミックを混合させたセメント状の混合樹脂という意味になる。
 虫歯の根の治療の専門医は、それをセメントを塗るようにコテでペタペタと歯の欠けたところに充填してくれた・・・
 国立病院では、コンポジットレジン充填は保険でやってくれたが、歯科医によっては必ずしも保険ではないそうだ。材料費と手間と技術が必要な割には、保険点数が低いということらしい。
 
 「この大学病院は治療はともかく、メンテナンスはあまり上手じゃないんですよ。クリニックを紹介しますから、歯周病なども、そこで診てもらった方がいいですよ」
 虫歯の根の治療の専門医は、そうも言った・・・確かに大学病院で治療にあたるのは若い医者が多かった。

 この医師がなぜ、開業医での治療を勧めたのか、本当のところは判らない。
 大学病院で研鑽を積んで開業したベテラン医師の方が、経験豊富で腕が良いのかもしれない。
 あるいは、大学病院はあくまでも研究施設なのだから、メンテナンスは開業医に任せるということなのかもしれない。それでなくても、大学病院は混んでいる。
 あるいは、大学病院が患者を独占していては、開業医が成り立たないので、歯科医同士のある種の互助意識があるのかもしれない・・・

 紹介されたクリニックを訪ねると、たまたま手が空いていて、すぐに診てくれた。
 女性の歯科医だった。年齢的にはオバサンだが、知的美人なのでオバサンというには失礼というか、ちょっと気が引ける。
 
 診察台に座ると、目の前にWINDOWSパソコンのモニターがあった。
 「すごいですね、パソコンのモニターですね」
 正直、何に使うのだろうと思いながら尋ねると、知的美人の医者は紹介状を読みながら、にこりともせずに言った。
 「歯を白くしたいんですね・・・まず、レントゲンを撮りましょう」

 また、レントゲンを撮るのか・・・と思いながらレントゲン室に行くと、国立病院よりもスマートな最新鋭のレントゲン装置があった。
 診察台に戻ると、レントゲン写真が早速モニターに映し出されていた。
 あのレントゲン装置はフィルムじゃなくてデジタル撮影なんだな・・・と思ったが、知的美人の医者の冷たい反応が予想されたので、何も言わなかった。
 口を大きく開けてカメラで写真も撮ったが、やはりデジタルカメラで、すぐにパソコンのモニターに映し出された。

 「まず、歯石を取りましょう」
 そう歯医者に言われて、都合4回、上下の歯の歯石を取りに通院した。 それにしても、国立病院でしたクリーニングって、いったい何だったのだろう? 時間も20分程度だったし、本当に申し訳程度のクリーニングだった・・・
 まあ、それにしても歯石のクリーニングというのは嬉しいものじゃない。歯と歯肉の間をゴリゴリ掃除されて出血もするし、ヒリヒリもする。

 歯石のクリーニングが終わると、歯周病はなかったと医者は言った。そして、いよいよ治療済みの虫歯のインレー(inlay)、充填物の交換の話になった。
 「ハイブリッドセラミックという、セラミックとプラスチックを混ぜたものの方が、長く持つので良いと思いますが、それでいいですか?」
 やっぱ、保険外治療になるのか・・・でも、白い歯にしてほしいと頼んだのは俺だし・・・
 「はい・・・」
 
 保険外インレーには、セラミック、ハイブリッドセラミック、いわゆる金歯のゴールドがあって、それぞれに一長一短があるそうだが、いずれも1本3万円前後からだそうである。
 歯医者はやっぱり高い・・・

 治療費の話を連れ合いにすると、「うわっ、高い」と言ったが、そもそも歯の詰め物を白くしたらと勧めていたのは連れ合いだし・・・
 「仕方ないわね」とも言ったが、年末の入用な時にちょっと迷惑そうだった・・・

 歯石をクリーニングしたら、小さな虫歯も見つかった。
 「小さな虫歯もありますから、一緒に治療しておきますね・・・
 あっ、こっちは詰め物をしませんから・・・」
 追加の治療費も取られなかったし、きっと、サービスのつもりなんだろうな・・・

 すでにハイブリッドセラミックに換えた歯は、色彩的にも触感的にも違和感がなくなって、歯磨きの時もそうでない時も、虫歯だということをすっかり忘れている。
 正月までにはどの歯も白くなって、虫歯だということも忘れるだろうから・・・まあ、治療費も一緒に年忘れということにするか・・・

 それにしても、歯医者はやっぱり高い・・・

親知らずの話(11)最後の親知らずと新たな試練

 まさか、こんなに長い話になるとは思わなかった・・・親知らずの話がまだ終わらない、いやはや。

 左下の親知らずを最初に抜いたのが、5月23日だった。右下が6月27日、右上が8月29日、そして左上、つまり4本目の最後の親知らずを9月7日に抜いた。
 春から夏、そして初秋へと季節は移ろった・・・
 無用な親知らずとはいえ、自分の体の一部であった親知らずがみんななくなってしまうと、一抹の寂しさを覚える。

 私の体を去って行った親知らずたちが、ちょっと愛おしい・・・

 最後の抜歯は、何の問題も無く終わった。
 麻酔は5ヶ所に打った。歯茎の表側に2ヶ所、裏側に2ヶ所、そして念のためなのか、頬に近いところに1ヶ所。前回よりは多少抜きにくかったのかもしれない。
 少し手間取っているようだったし、時間も少しだけ長かった。実際、抜いた後に歯茎に開いた穴は、前回よりも少しだけ大きかった。
 それでも、不意に歯は抜けた。「抜けましたよ」と言われて、初めて抜歯が終わったことに気がついた。
 歯が抜けた感覚はなかった・・・

 前回、洟垂れ小僧の恐怖について書いたが、上顎洞と交通することもなく、つまり上顎に穴が開いて副鼻腔と繋がることもなく、無事に抜歯は終わった。
 ちなみに、下の親知らずに比べると、上の親知らずの手術料はだいぶ安かった。値段の分だけ、医者も大変でなければ、患者も苦労することが少ない。労力と苦痛は、対価で推し量れるわけである・・・

 右上ほどではなかったが、左上の親知らずも黒ずんでいた。
 「虫歯になっています。ブラッシングが届きにくいんですね」
と担当医が言った。

 親知らずは十代後半から二十代にかけて、あるいはもっと後になって生えてくる。他の歯は子どもの頃に乳歯と入れ替わって生え揃うが、親知らずだけは成人する頃にならないと生えてこない。親から独立してから生えてくるから親知らず、というわけである。

 親知らずを抜いた後に改めて歯磨きをしてみると、それでも上顎の奥歯というのは磨きにくい。親知らずと接していた面にはなかなか歯ブラシが届きにくい。まして、親知らずともなると上手く磨けないのが普通だ。
 下顎の親知らずはまだしも、上顎の親知らずを見ることは、デンタル用の鏡でも使わないと難しい。デンタル用の鏡を苦労しながら洗面所の鏡に映してようやく見られる。つまり、宿命的に虫歯になる歯なのである。

 私は子どもの頃から歯が丈夫だった。歯の健康優良児というのがあって、小学生の時と中学生の時に一度ずつ表彰されている。歯の健康優良児というのが今もあるのかは知らないが・・・
 そのせいで、この歳まで親知らずを抜かないで来た。しかし、どんなに歯が丈夫でも、やはり親知らずは虫歯になるのである。抜歯した黒ずんだ親知らずを見て、改めてそう感じた。
 まあ、中には親知らずが顔を出さないままの人もいるだろうが・・・

 「これで4本の歯を抜き終わりました。もう親知らずで悩まされることはありません・・・」
 今回の抜歯も二人がかりだったが、抜歯を終えてベテラン医師が言った。
 「・・・10代、20代の時に抜くのと違い、50代ともなると、親知らずも根を張ってしまって抜くのが大変なんですね・・・」
 確かに。
 「・・・顎の骨にも血が通っているんですが、ごく稀に、抜歯後に血が通わなくなって骨が死んでしまうことがあります。歳を取ってからの親知らずの抜歯では、そういうことがあります。ごく稀にですが・・・」

 顎の骨が死ぬ・・・顎の骨が死ぬ・・・顎の骨が死ぬ?

 顎の骨が死んだら、どうなるんだ? 死んだ骨を削って、代わりにプラスチックの骨でも埋め込むのか?
 ここは大学病院だからな・・・外来だけじゃなくて、入院棟もあるんだ。
 歯の健康優良児だった俺には想像もつかないが、歯科で入院するっていうのは、一体どういうことなんだ? 入院しなければならないほどの歯というか顎の病状って、一体どんなんだ?

 「親知らずの抜歯はこれで終了しますが、もし、何か異状があった時には連絡をください」
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・終了

 つまり、親知らずの抜歯は若いうちが良い。どうせ虫歯になるんだから、若いうちに抜いておいた方が良い・・・つまり、これが結論

 私はそれから1週間後に、術後の経過を診てもらうために再度、口腔外科を訪れた。
 経過は順調だったが、左上の親知らずの隣の奥歯の根元が虫歯になっていることが判った。親知らずを抜いたので見つかった、と担当医が言った。
 やはり、親知らずは若いうちに抜いておいた方が良い。気づかないうちに隣の歯まで虫歯になる・・・
 担当医は再び、むし歯科への紹介状を書いてくれた。

 顎の骨が壊死(えし)しないかぎり、新たな抜歯でもしないかぎり、口腔外科に来るのはこれが最後だった。
 私は戦国大名と同じ苗字の担当医と、抜歯を手伝ったベテランの指導医にお礼の挨拶をして病院を出た。

 そして今日、私は紹介状を持ってむし歯科を訪れた。
 「奥歯の根が、浅いですが虫歯になっています。位置的に根元なので埋められないかもしれませんが、まだ抜歯後の歯茎が締まっていないので、処置は一ヵ月後にしましょう。今日はレントゲンを撮って終わりにします」
 根元なので埋められないかもしれない・・・埋められないとどうなるんだ? 埋めて欲しい・・・

 親知らずの話は終わったが、1ヵ月後、新たな試練が私を待ち受けることになった・・・

親知らずの話(10)洟垂れ小僧の恐怖

 8月29日、下顎(したあご)の2本の親知らずに続いて上顎の親知らずを抜くために、御茶ノ水にある歯科専門の大学病院に行った。戦国武将と同じ苗字の担当医に、待ってましたとばかりに診察台に案内された。

 「右と左の上顎のどちらの親知らずから抜きましょうか?」
 「左の方から抜きたいんですが・・・時々、出血するし、奥歯との間に食べ滓が詰まりやすいんですよね」
 「そうですか・・・でも、右の親知らずの方が黒ずんでいるので、そちらを先に抜いた方が良いと思います」

 担当医は妙に遠慮深いところがあって、必ず私の意向を聞く。意向を聞いてから、自分の意見を言う。右から抜いた方がいいなら、最初からそう言えばいいのに・・・
 「じゃあ、そうしてください・・・」

 前回と同じ、ベテラン医師との二人で抜歯が行われることになった。
 インフォームド・コンセント(informed consent)、事前の説明があった。ちなみにインフォームド・コンセントとは、医師が患者に対して治療法やリスクなどについて十分に説明をし、患者がその治療などの医療行為を受けることに同意することである。インフォームド・コンセントそのものの意味は、情報を与えられた上での同意なので、医療行為に限ったことではない。

 「上顎の親知らずの抜歯は、下顎の時のように骨は削りません。ただ、歯の根元が上顎洞(じょうがくどう)に接していますので、抜歯した際に上顎洞と交通することがあります。親知らずの根が残った場合にも、それを取り除くために上顎洞に穴が空くことがあります。交通すると鼻が詰まりやすくなったり、炎症を起こして鼻水が垂れたりしますが自然に塞がります。塞がらない場合は、処置をします」
 「はあ・・・」

 私はシャレコウベ、頭蓋骨を頭に描いた。そうか、鼻の穴は繋がっているもんな。も繋がっているもんな。鼻腔(びこう)の脇に上顎洞っていうのがあって、その下に上顎があって親知らずが生えているのか・・・

 上顎洞というのは鼻腔の左右にあって、奥歯の上部に位置するんだそうだ。つまり、この上顎の骨は下顎の骨ほど厚くはなく、むしろ薄い。親知らずの根は薄い上顎の骨にあるので、抜歯した際にこの薄い骨に穴が空く。つまりその上にある上顎洞と通じてしまうことになる。
 鼻腔と上顎洞は繋がっているので、細菌に感染して炎症が起きると、鼻が詰まったり、鼻水が口内に垂れてくる。上顎洞以外にも、副鼻腔(ふくびこう)と呼ばれる空洞がいくつかあり、蓄膿症もこの副鼻腔の炎症の一つなのだそうだ。
 抜歯の際に穴が空いても、小さければ自然に塞がる・・・

 でも、穴が空いたら嫌だな・・・洟(はな)垂れ小僧になっちまうのか・・・でも、抜歯しなくていいですなんて言えないもんな・・・インフォームド・コンセントなんて言ったって、結局は同意するしかないんだよな・・・

 いつものように麻酔を注射された。
 「気分はどうですか? 悪かったりしませんか?」
 「大丈夫です」と口では言ってみたものの、本当は最悪だった。吐き気とかじゃなくて、メランコリーな気分は最悪だった。
 前の抜歯みたいに大変なことになるのかな・・・その上、洟垂れ小僧か・・・最悪、サイテーだな・・・

 麻酔が効いて、ベテラン医師と二人での抜歯が始まった。
 「隣の歯との間に挟んで」とか、「回転させて」とか、ベテラン医師の指示が聞こえる・・・
 「よし、抜けた!」
 オペが始まって15分も経たなかった。痛むこともなく、実に呆気なくオペは終わった。
 「上手く抜けましたよ。穴は空きませんでした」

 良かった、洟垂れ小僧にならずに済んだ・・・

 抜いた歯を見せてもらうと、親知らずが黒ずんでいた。確かに虫歯になっていた。歯磨きの時でも、上顎の歯は磨きづらく、親知らずともなるともっと磨きにくい。その上、鏡を覗いても、奥歯は見えにくく、親知らずはもっと見えにくい。
 いつの間にか、こんな黒い歯になっていたんだ・・・
 ちょっとショックだった。担当医が、この親知らずを先に抜きたいと言った理由が、その黒ずんだ歯を見てようやく判った。

 「来週、また来てください。今日抜いた歯の経過をみて、問題なければ左の親知らずを抜きましょう」
 鎮痛剤と化膿止めを処方してもらった。痛みもなければ、疲れもない。あっという間に抜けてしまった。
 そのまま、地下鉄に乗って仕事に向かった。
 
 その夜、例によって担当医から電話があった。
 「具合は如何ですか?」
 「なんともありません、痛みもほとんどありません」
 「そうですか。じゃあ、また来週来てください」
 
 親知らず、あと1本・・・



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七会 静 (ななえ・しずか)

▼著書
ハリー・ポッターの魔法ワールド大図鑑 (廣済堂PB)
「ハリー・ポッター」のホントの魔法事典 (廣済堂PB)
よくわかる「世界の死神」事典 (廣済堂文庫)
ナルニアへの旅―ファンタジー・ツアー・ガイド(主婦と生活社)
幻の錬金術師列伝―賢者の石の探求者たち(主婦と生活社)
ハリー・ポッターの魔法ガイドブック 愛蔵版(主婦と生活社)

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