奥日光・高山への遠い旅路(6)

IMG_9592 (275x367)
 高山山頂

 滝上から頂上まで、ほぼ1時間20分掛かった。
 標準タイム通り。ちょっと意外だったが、連れ合いが頑張ったということだ。
 昼食を終え、少し休んだところで下山開始。来た路とは反対、無名坂から幕張峠に降りるコースを選ぶ。
 幕張峠まで降りて、疲れていればハイブリッドバスを止めて乗ることにしよう。

 下りはかなりの急坂で、100mの標高差を一気に下りる。
 足が届かない段差も多く、連れのペースに合わせてゆっくりと降りる。
 コースは見ただけではわからないので、先に降りながら、路を間違えないように赤い標識を捜す。

 急坂を下り切るあたりで、平らになった先に道標が見えた。
 幕張峠と熊窪との分岐点、無名坂だ。
 道標で確認して幕張峠に向かう。ここからは草地の緩斜面を真直ぐに進む小路で、口笛を吹いたり雑談しながら歩く。途中、鹿避けのフェンスがある。

 突然、ハイブリッドバスの通る舗装道に出た。
 連れに確認して、赤沼まで徒歩で向かうことにする。
 途中でハイブリッドバスに追い抜かれたが、ほどなく赤沼に到着。あとで地図を見て、路線バスに乗るだけなら、出発点の滝上に戻った方が近かったことを知る。

 下りは2時間弱。
 標準タイムは1時間25分だったが、急坂をゆっくり下りた分だけ時間が掛かったが、足を痛めなくて良かった。もっとも、連れはしばらく筋肉痛が残ったという話だったが。
       
IMG_9587 (367x275)
 戦場ヶ原。赤沼付近を行くバスが見える
IMG_9589 (367x275)
 赤岩から大日崎にかけての中禅寺湖

 赤沼から路線バスに乗り、ホテルへ。
 チェックインをして部屋に案内される時、背負ったリュックを見た客室係の女性に、「今日は戦場ヶ原に行かれたんですか?」と訊かれた。

 「高山に登ってきたんですよ。前々から一度登ってみたいと思っていて・・・」と答えると、驚いたように目を丸くして、
 「高山に登ったんですか。私はまだ一度も登ったことがありません」と女性が言った。
 そうか、ホテルの宿泊客で高山に登るような者はいないのか。

 早速、温泉に行って体を洗い、露天風呂に浸かる。
 山登りの疲れが、お湯の中に溶け出していくようだった。

奥日光・高山への遠い旅路(5)

          
IMG_9581 (367x275)
 稜線から望む戦場ヶ原
IMG_9585 (367x275)
 稜線からの中禅寺湖、千手が浜
IMG_9579 (367x275)
 高山への尾根路(左・戦場ヶ原、右・中禅寺湖)

 ホテルに着くと、連れ合いの持っていた旅行ケースをフロントに預け、路線バスの停留所に向かう。
 リュックを背負うのは私、連れ合いは杖1本だけ。しきりに申しわけなさそうにするが、いずれそれで良かったと思うはず。
 ほどなくやってきたバスに乗り込み、竜頭の滝の次のバス停、滝上で降りる。

 来た道を戻って竜頭の橋を渡り、かつての竜頭山の家があった右の道に入ると、途中左に高山への登山道入口がある。
 緩やかに山裾を巻く林の中の路を進むと、右斜面の傾斜のある道に変わるが、ところどころ雨で土が流されている。

 いきなりけもの道のようになり、足元がおぼつかなくなったので、山道に慣れない連れが弱音を吐き始める。
 予想以上に路が荒れていたが、菖蒲が浜から赤岩・熊窪を経て千手が浜に至る湖岸の路が、ここ数年の大雨で崩れていたことを思い出し、同じ高山の北斜面が同じように崩れているのは当然だということに思い至る。

 スキーもそうだが、急斜面に怯えると足がすくむ。足がすくむと腰が引けて、却ってバランスを崩す。
 杖があるとそれに頼ろうとするので、さらに腰が引けてしまう。
 そういえば連れは高所恐怖症だった。
 引き返したいと泣き言を始めたので、「尾根に出れば路が良くなるから」といって励ます。

 途中、山を下りてくる人たちと出会ったのは幸いだった。
 下りてくる人たちを見て、この路が先に進めることがわかり、少しは安心したのだろう。
 急斜面は上りよりも下りの方が大変で、連れも諦めがついたのかもしれない。

 尾根に出ると、途端に気持ち良い風が吹いてくる。
 中禅寺湖から戦場ヶ原に渡る風で、額や背中に掻いた汗を乾かしてくれる。
 尾根路は右手が戦場ヶ原、左手が中禅寺湖で、ときどき樹々の間から見える。
 快適な路なのだが、すでに高所恐怖症に陥っている連れは、左右の下り斜面に怯えていて景色を眺めるどころではないらしい。
 「北アルプスの痩せ尾根に比べれば、散歩コースだよ」と言っても、気休めにもならないようだ。

 一つ目のピークを過ぎ、高山への上りに入るあたりで路を間違えた。
 けもの路だったのか、あるいは営林署員が入る路だったのか、しっかり踏み跡がついた山を巻く路を歩いていくと、急に路が怪しくなった。
 踏み跡は続いているが谷に降りていくようで、連れを残して数m先まで様子を見に行き、間違えたらしいと感じて路を引き返すことにした。

 注意深く引き返すと、来たときは灌木に隠れて見えなかった直角に曲がる小径を発見した。藪に隠れて赤く塗った杭もある。
 尾根伝いの路で、しばらく行くと九十九折りの急勾配になる。胸突き八丁、山頂への上りだ。
 息を切らす連れ合いに合わせてゆっくり登ると、やがて前が開けて勾配が緩やかになり、路の先に休んでいる人が見える。頂上だ。
 
 山頂で食べるおにぎりは殊の外旨い。
 この幸福感は、どんなに美味しいレストランでも味わえないものだ。(つづく)

奥日光・高山への遠い旅路(4)

                            
IMG_9577 (367x275)
 東武日光駅
IMG_9574 (367x275)
 ザ・リッツ・カールトン日光の完成模型
IMG_9606 (367x275)
 建設工事の始まったザ・リッツ・カールトン日光
IMG_9608 (367x275)
 いろは坂(こちらは下り)

 東武線は竹ノ塚駅が都内最後の駅で、半世紀前、この辺りは田園地帯だった。
 茅葺きの家も多かったが、当時を思い起こすと昔日の感がある。

 埼玉県に入って3つ目の駅が松原団地駅で、今年4月に獨協大学前駅に駅名が変更された。
 松原団地駅が誕生したのが昭和37年。東京オリンピックの2年前だ。
 日本が戦後復興を遂げ、高度経済成長期に入った頃で、地方からの人々を集めて東京の人口は急拡大していた。
 周辺区にはまだ農地が広がっていたが、それも次第に宅地化されていき、交通の便の良い鉄道沿線上の多摩や埼玉県南部、千葉県東部に住宅地が伸びていった。

 そうした人口を吸収するための集合住宅、団地が郊外に建てられたのが東京オリンピックの前後で、その中でもとりわけ規模が大きかったのが草加市に造られた松原団地だった。
 東洋最大のマンモス団地を謳っていたのを憶えている。

 その松原団地も半世紀を過ぎて老朽化し、建て直しが進んでいるという話をテレビで知った。
 目を凝らすと、高層の新しい建物と老朽化した建物が車窓を通り過ぎる。

 けごん5号の次の停車駅が春日部で、ここでも乗降がある。東武野田線の乗換駅で、大宮と柏・船橋を結んでいる。
 春日部の3つ先が東武動物公園駅。地下鉄乗り入れの終着駅だが、東武動物公園ができるまでは杉戸駅と呼んでいた。
 駅名変更から30年以上が経つが、駅があるのは宮代町で杉戸町は川を渡った向こう側なので、これで良かったのかもしれない。

 けごん5号は栃木、新鹿沼、下今市に停まり、東武日光に到着したのが9時20分。
 早朝に起き、朝早くに浅草を出発したのに目はギンギンに冴えていた。
 久し振りの列車の旅は楽しい。

 改札を出ると、まず今夜泊まるホテルに行く算段をする。
 私が背負うリュックはそのまま山に登れるように荷物が詰めてあったが、連れ合いが引っ張る旅行ケースには宿泊用の荷物が入っていて、山に登るには文字通りお荷物だった。
 「まるごと日光 東武フリーパス」を持っているので路線バスでホテルに向かってもよかったが、ホテルの送迎バスがあるというので、それを利用することにする。

 バスには時間があったので駅舎をふらふらしていたら、入り口付近に面白いものを見つけた。
 日光レークサイドホテルの跡地に建つザ・リッツ・カールトン日光の完成模型が飾ってあったのだ。
 3棟からなり、敷地いっぱいに建つ感じだ。
 私には手の届かないホテルになりそうなので、せめて模型で目の保養をした。
 
 ホテルの送迎バスに乗り込み、一路ホテルへ。
 他人の運転でいろは坂を登るのは気が楽でいい。(つづく)



運営者

七会 静 (ななえ・しずか)

▼著書
ハリー・ポッターの魔法ワールド大図鑑 (廣済堂PB)
「ハリー・ポッター」のホントの魔法事典 (廣済堂PB)
よくわかる「世界の死神」事典 (廣済堂文庫)
ナルニアへの旅―ファンタジー・ツアー・ガイド(主婦と生活社)
幻の錬金術師列伝―賢者の石の探求者たち(主婦と生活社)
ハリー・ポッターの魔法ガイドブック 愛蔵版(主婦と生活社)

(c)NANAE SHIZUKA

リンク
▼運営者の関連サイトです。



▼オンライン辞書
goo辞書  YAHOO!辞書  infoseekマルチ辞書
weblio辞書  @nifty辞書  英辞郎on the WEB

▼参加しています。
ブログランキング・にほんブログ村へ

サイト案内
調べたい言葉を、下の窓に入れて検索ボタンを押してみてください。
もしかしたら、その言葉について書かれた記事が見つかるかも・・・

▼本ブログについての説明・・・
「言葉の重さと、我が存在の軽さについて」  (2007/2/3)
最新記事
最新コメント
カテゴリ
カレンダー
06 | 2018/07 | 08
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
月別アーカイブ
メールフォーム

▼運営者への連絡にお使いください。

お名前:
メールアドレス:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
QRコード
QR
お知らせ
▼更新は、現在週1回程度を予定しています。
▼本ブログではFC2アクセス解析を行っています。
▼2006/6/30以前の記事は JUGEM ブログ、2011/9/30以前の記事は忍者ブログに掲載していたものです。2011/9/30以前のコメントには、移転時に一部欠落してしまったものがあります。またコメントに対しての運営者の返事はすべて欠落しています。コメントをいただいた方には、ご了承をお願いします。
▼上記移転時に、一部レイアウトの乱れているページがあります。またリンクが正しくないものがありますが、ご了承ください。
▼不適当と判断されるコメントは、断りなく削除することがあります。
▼トラックバックは受け付けていません。
▼本ブログでは著作権法の権利を保持しています。記事および写真の無断での複製・転載・送信・翻訳等はできません。
▼記事の一部を引用する場合は、本ブログからの引用であることを明記し、上の欄のメールフォームでご連絡ください。
▼リンクはフリーです。