性的マイノリティのカムアウトは、「出る杭は打たれる」か?(下)

 人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書「出る杭は打たれる:日本の学校におけるLGBT生徒へのいじめと排除」の続き。
 LGBTは、Lesbian(レズビアン)、Gay(ゲイ)、Bisexual(バイセクシュアル)、Transgender(トランスジェンダー)のそれぞれの頭文字を採った総称のこと。

 「出る杭は打たれる」の二番目の語釈として、大辞林と大辞泉は次のように書いている。
(大辞林)よけいなことをする者は他から制裁を受ける。
(大辞泉)さし出たことをする者は、人から非難され、制裁を受ける。

 カムアウトすること、あるいは報告書の漫画にある全国高校生スピーチコンテストや校内新聞に発表することが、「よけいなことをする者」「さし出たことをする者」にあたるのだろうか。
 別に揚げ足を取ろうとか、報告書に難癖をつけようとか思っているわけではない。
 LGBTの人たちの人権を主張しようとする団体が、「出る杭は打たれる」といった日陰者のような表現を使うことが気になったのである。

 出る杭ではなく、人間誰もが主張できる当然の権利なのではないのか?
 天皇や皇族の方々だって、私たちにも人権があると控え目ながらも主張されているではないか。
 それとも、そうした主張を「出る杭」だと考える輩がいるということなのか?
 ヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書の「出る杭」には、そうした深い意味が籠められているということなのか?

 LGBTの人たちに対する差別意識が、私にまったくないかといえば嘘になる。
 だから、ここでは、私がこれまでに見て印象に残った、LGBTがテーマの映画を紹介しておくに留める。


『噂の二人』
 1961年制作のアメリカ映画。ウィリアム・ワイラー監督の1936年の映画のセルフ・リメイクで、オードリー・ヘプバーンとシャーリー・マクレーンが主演している。
 二人は戦前の私塾のような私立女子校を共同で経営しているが、シャーリー・マクレーンがヘプバーンに愛情を抱きカムアウトする。
 親友としての感情しか持っていなかったヘプバーンが取り乱すのを見てマクレーンは自殺してしまうが、同性愛が罪悪とされ、抑圧されていた時代に、その罪深い思いに気づいた女と、それを上手く受け止められない女の二人の心の機微を描いた好編となっている。

『ブロークバック・マウンテン』
 2005年制作のアメリカ映画。アン・リー監督で、 ヒース・レジャーと ジェイク・ギレンホールが主演している。
 保守的なアメリカ中西部が舞台で、カウボーイの二人が愛し合うようになるものの、差別を怖れてそれぞれに結婚をし、人目を避けての密会を続ける。
 悲しい結末となるものの、家族に二人の関係を許されるという心温まるラストで、社会の偏見の中で禁断の恋を貫いた男の孤高の人生の物語となっている。

『リリーのすべて』
 2015年のイギリス・アメリカ・ドイツの合作映画。トム・フーパー監督で、世界で初めての性転換手術を受けたデンマークの画家の伝記映画。
 結婚後、性同一障害であることに気付き、女性への変身を切望する女心を、エディ・レッドメインが熱演する。
 性転換を望む夫を理解し、妻の立場を失うことになることを承知で支える妻をアリシア・ヴィキャンデルが演じ、アカデミー助演女優賞を受賞している。

性的マイノリティのカムアウトは、「出る杭は打たれる」か?(上)

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 少し前のことだが、NHKのニュースで、人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチが出した性的マイノリティの生徒についての報告書「出る杭は打たれる:日本の学校におけるLGBT生徒へのいじめと排除」を取り上げていた。
 他のことをしながらテレビを点けていたので、きちんと見ていたわけではない。
 ただ、性的マイノリティの子供たちが、自分は性的マイノリティであることを周囲に明らかにすること、いわゆるカムアウトについて、「出る杭は打たれる」と表現していることに違和感を覚えた。

 ヒューマン・ライツ・ウォッチのホームページに、報告書の説明があるので、そのまま引用しておく。

 ──今回の報告書『出る杭は打たれる:日本の学校におけるLGBT生徒へのいじめと排除』(全84頁)は、LGBTの子ども・生徒をいじめにさらし、情報や自己表現へのアクセスを妨げる原因のひとつとなっている日本政府の政策の問題点について分析。日本の学校では残忍ないじめが広く起きている。だが国のいじめ防止基本方針では、いじめ被害を最も受けやすい集団のひとつであるLGBTの子ども・生徒を明記せず、基本的権利より規範意識の推進をうたっている。LGBTの子どもたちはヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、教師から、ゲイやトランスジェンダーであることをオープンにして学校生活を送ることは自己中心的だとか、学校生活がうまくいかなくなるなどと注意されたと述べた。

 LGBTは、Lesbian(レズビアン)、Gay(ゲイ)、Bisexual(バイセクシュアル)、Transgender(トランスジェンダー)のそれぞれの頭文字を採った総称のことだそうで、こういう言い方があることを初めて知ったくらいだから、私のLGBTについての理解度もたかが知れている。

 報告書の内容はヒューマン・ライツ・ウォッチのホームページから読めるが、若干長いので、要約したPDAファイルにリンクを張っておく。こちらの方が読みやすいかもしれない。

 さて、ヒューマン・ライツ・ウォッチの方々には申し訳ないが、本題は「出る杭は打たれる」の国語的解釈についてである。

でるくいはうたれる【出る杭は打たれる】
 〔「出る釘くぎは打たれる」とも〕
 ①頭角を現す者はとかく他の人から憎まれ邪魔をされる。
 ②よけいなことをする者は他から制裁を受ける。(大辞林)

 デジタル大辞泉の方も、①②とも同じ意味が書かれているが、むしろこちらの方がわかりやすいかもしれない。

でるくいはうたれる【出る杭は打たれる】
 《「出る釘は打たれる」とも》
 1 才能・手腕があってぬきんでている人は、とかく人から憎まれる。
 2 さし出たことをする者は、人から非難され、制裁を受ける。

 ヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書は、どちらも2番目の意味で使われている。
 しかし・・・

白河以北一山百文、蝦夷地の思想

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 3.11が近づいてきて、東日本大震災関連の話題が多くなってきた。

 3/3の日経新聞朝刊の文化欄に、「東北人フォーク憤り歌う」と題する文が載っていた。
 「被災地の苦しみ伝える『花は咲けども』携え全国回る」という副題が付いていたので、以前、紹介したことのある山形県の農村フォークソンググループ、影法師のことだと気づいた。
 筆者は影法師で作詞とベースを担当している青木文雄さんだった。

 15/10/13「『花は咲く』に戸惑えど、『花は咲けども』に答えを知る」に書いたように、影法師を紹介するラジオ番組を途中から聴いた。
 そのため、影法師のプロフィールを紹介する前半を聴き逃したのだが、青木さんの文から、その欠けていた部分を知ることができた。

 結成40年ということからも、皆さんのおおよその年齢を知ることができるが、青木さんの文に感銘を受けたのは、影法師というグループが東北におけるこの40年の時代を背負ってきたということだった。



 戦後、東北は都市労働力の供給源となり、多くの若者たちが東京に移住した。
 具体的には、その60年代の状況を映画「ALWAYS 三丁目の夕日」が描くように、主人公の六子は集団就職で東京に出てくる。
 学歴社会の始まる70年代になると、若者たちは大学に入るために上京し、東京に就職先を探すことになる。

 一方、それに取り残される若者たちもいて、地方の因習の中で、長男である青木さんは、家を継ぐために故郷に残るのである。
 おそらく、影法師のメンバー全員に共通することなのだろう。

 そうして故郷に残った彼らの思いはフォークソングに向かったのであり、故郷に残った彼らの目に映った都会と農村とのギャップが歌われていく。
 80年代の都会のバブル、東北自動車道全線開通。

 東北自動車道全通は、青木さんらの目には東北が首都圏のごみ捨て場になることのように映った。
 交通網の整備、利便性というものは、得てしてそのようなネガティブな側面を持つのかもしれない。
 そうした東京に対する東北の怒り、その延長に3.11の福島第一原発の事故があった。

 青木さんの文で、私は初めて「白河以北一山百文」という言葉を知った。
 白河の関を越えれば山ひとつ百文の価値しかないという東北蔑視の言葉で、戊辰戦争のときに官軍によって生まれたそうだ。
 百文の価値については米や醤油1升と書かれたものもあって、今なら1500円前後に相当する。
 
 会津が長州を中心とする明治政府に敗れて150年、白河以北一山百文の思想は日本の中央政府に引き継がれてきた──
 青木さんの主張は確かにその通りかもしれない。
 産業廃棄物だけでなく、核のゴミも、福島第一原発事故の核汚染土も東北に押し付けられている。
 東北・北海道は所詮、蝦夷地──

 歯舞が読めなかった沖縄県選出の沖縄北方担当大臣がいたが、ゴミを押し付けられる蝦夷地と、基地を押し付けられる琉球は、中央政府からすれば所詮、一山百文の価値しかない倭の支配地にすぎないということか・・・

 奇しくも時の首相は長州閥。
 今日のニュースで、首相がけんもほろろだった辺野古訴訟について和解案を受け入れるという。


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