不倫はいつ始まったのか?(下)


行きずりの不倫を描いて小説も超人気
となった、ポジティブな不倫ドラマ

デヴィッド・リーンの名作『逢びき』。
W不倫だが一線は越えない(1945)

 女性議員の不倫ブームの話の3回目。
 のんびり不倫について書いていたら、降って湧いた衆議院解散総選挙。
 国会議員も不倫なんかしてる場合じゃない・・・
 
 不倫は日本で作られた明治以降の言葉で、もともとは「人倫にはずれること」、倫理にしからずのことだった。
 男女の関係で使われるようになったのは近年のことだ。

 倫は「人+侖」の会意兼形声文字で、侖は短冊の竹札を集めてきちんと整理するさま、人偏がついて、倫はきちんと並んだ人間の間柄を意味する。
 同列に並んだ仲間、人間同士のきちんと整理された関係、筋道、きちんと整った順序の意味となり、「人の守るべき筋道」の意味で使われることが多い。

 従って、打消しの不がつく不倫は、人の道に背くこと、人倫にはずれることになる。
 ちなみに、漢語の不倫には、程度・種類などが同じでない、という意味がある。

 男女の間で人の道に背けば、それも不倫には違いないが、既婚者が他の異性と肉体関係を持つことという最近の意味でいえば、かつては姦通や不義密通という言葉が使われた。

かんつう【姦通】
①男女の不義の私通。②有夫の婦人と夫以外の男子とが私通すること。

しつう【私通】
男女がひそかに情を通ずること。密通。(広辞苑)

 時代がかったというか、明治・大正・昭和の香りのする言葉だが、戦前までは姦通罪があって、江戸時代には死罪、明治からは禁錮・懲役の重罪とされた。
 旧刑法では、有夫の女子と夫以外の男子とが姦通した場合のみが姦通罪の構成要件とされ、夫が妻以外の未婚の女子と姦通しても罪には問われなかった。

 男女不平等の姦通罪は戦後の昭和22年に廃止され、それ以降は姦通しても罪に問われることはなくなった。
 もちろん、民法上の損害賠償請求は免れない。

 姦通も人の道に背くという点では不倫だが、広く人倫にはずれることを意味する不倫とは同義ではない。
 もっともワイドショーや週刊誌が使う不倫は、人倫にはずれることではなく、既婚者が、あるいは相手が既婚者との不義の私通を指していて、姦通と同義といえる。
 山尾志桜里さんの場合は戦前でいえば姦通罪で、今井絵理子さんは姦通罪には問われないが姦通①の男女の不義の私通に相当する。

 不倫ではなく、姦通だとかダブル姦通という言葉を使った方がすっきりする。
 姦通が直截的だというなら、女性議員には不義密通・ダブル不義密通と言ってあげた方が、そこはかとない情緒があっていいかもしれない。

不倫はいつ始まったのか?(中)


粗野なニュージーランドの不倫。
不倫を成就してパルム・ドール受賞

東洋的色香が人気の香港の不倫。
2組の夫婦がWどころか卍不倫する

 女性議員の不倫がブームだ。
 最新は民進党を離党した山尾志桜里さん、その前は自民党の今井絵理子さん、日本維新の会を除名された上西小百合さんも秘書との不倫温泉が話題になった。

 浮気心、出来心は誰にでもあるが、さて、不倫はいつからあったのか?
 日本語大辞典を紐解けば、明治36年、国木田独歩の小説『正直者』に不倫という言葉が登場している。

 主人公である「私」の父は、私が幼い頃に母が死んだあとも女中兼帯の妾を置き、それが「私」の記憶だけでも4人はいた。
 そのため真の家庭らしいものは作られず、「何故父は、さる不倫なことをして居たかといふ理由は知りません」と「私」は語る。

 不倫について、日本語大辞典は次のように説明する。
ふりん【不倫】
不道徳であること。特に男女関係で人の道にそむくこと。また、そのさま。

 『正直者』では、「私」は父について、情愛を持って妾に接したことはなく、ただ肉欲の満足のみをしているとし、それを不倫だと言っている。
 また「私」自身、下宿屋の娘とデキてしまい、その母娘から結婚を迫られるが、勤め先の校長に仲介を頼み、縁談を先延ばした挙句に娘を捨ててしまうという不実な青年で、父親と同じ不倫なことをしたと告白している。

 週刊誌やワイドショーの不倫報道では、既婚者が他の異性と肉体関係を持つことを不倫としていて、相手方が既婚者であればダブル不倫という言い方をしている。
 『正直者』は、やはり男女関係について不倫という言葉を使っているが、週刊誌やワイドショーの不倫の定義とは違って、父については女に対して肉欲だけで情愛がないことを不倫、人の道に背いているとし、私についても同様とし、男女の関係性よりも「人の道」に重きをおいていることがわかる。

 日本語大辞典には、高村光太郎の詩集『道程』(大正3年)から「癈頽者よりーバアナアド・リイチ君に呈す」も引用されている。
 こちらは友人のイギリス人陶芸家に宛てた詩で、当時デカダンスに陥っていた光太郎が、「余のまことに不倫なる自暴自棄の心を懐けるを」と、男女は関係なく、単に自らの不道徳を言っている。 

 50年前の広辞苑第二版では、不倫に男女は関係ない。
ふりん【不倫】
人倫にはずれること。人道にそむくこと。

 つまり、不倫が「特に男女関係について」使われるようになったのは、近年になってからということだ。
 まして、不倫に既婚を云々するようになったのは最近のこと。
 不倫が本来の意味で「人倫にはずれること」だとすれば、不倫をした議員は即刻、国会議員を辞職する、国会議員を辞職させるのが、小中学校で正課に格上げされた「道徳」の趣旨に沿っている。

不倫はいつ始まったのか?(上)


4回映画化された不倫の名作。
これは1942年、ヴィスコンティ版

ルイ・マルの不倫の名作。(1958年)
どちらも夫が殺され、結末は悲劇

 今に始まったことではないが、テレビのワイドショーは不倫ばやりで、最近は芸能人ばかりでなく政治家、それも女性議員が不倫戦線に雄々しく、いや女々しく参戦している。
 今更、不倫の話題などどうでもいいのだが、真面目な女性議員も多いだろうに、暴言・失言・不倫で騒がれることが度々だと、女性議員はろくでもないという印象ばかりが強くなってしまう。

 昔、指3本の御手当てで女を囲っていた首相がいて、不倫が原因だったのか指3本がけち臭かったのか、いずれにしても首相を辞任することになった。
 3.11のときに首相だった当時の民主党の首相だって、その前に女性問題を起こしている。

 女性議員だけを責めるのは不公平だが、だからといって不倫ぐらいいいじゃないかと言ってるわけでもなく、男でも女でも浮気心くらい誰でも持っているんじゃないかと勝手に想像しているので、書いていても歯切れが悪い。

 ただ議員の場合は、多額の税金を使って政治活動をしているので、不倫出張や宿泊代に政治活動費、つまり税金が使われているとなると、やっぱり議員を辞めろと言いたくなる。

 これは僻みでいうのではないが、こうした問題を起こす議員は、山本モナさんとの路上キスで話題をまいた男性議員を含めて、比較的美男美女が多い。
 見てくれが良いのも選挙で当選するためには必要なことで、だから議員としての資質よりも顔で政党が候補者を擁立しているというつもりはないが、でも、そう言いたい。

 もっとも、見てくれのいい候補者に投票して当選させている有権者にも責任はあって、悪人面の小沢一郎さんがこれだけ政界からスポイルされても当選する方が不思議なくらいだ。

 見てくれで当選した議員たちは、きっと当選する前から異性にモテたであろうし、浮気心が無二の親友だったかもしれない。
 当選して政治資金で浮気ができるとなれば、機会にさえ恵まれ、そこにイイ男イイ女がいれば、つい浮気心が湧いてしまうのだろう。

 これが互いに独身同士なら誰に咎められるわけでもない。
 そういえば若い議員同士の結婚も何組かあったし、独身男女の増加が社会問題となっている今日、国会議員が国会議事堂を婚活の場として利用するのも、立派な政治活動といえるだろう。
 それからいえば議員の不倫だって立派な少子化対策・・・って、子供ができたらやっぱりまずいな。

 夏の疲れが出たのか、何を書いているのやら、脳味噌はふにゃふにゃ、筆は汗で滑る。

 さて、不倫という言葉はいつからあったのか? 
 本題に入ろうとしたところで、すでに長くなった。
 以下次号・・・って不倫くらいで連載にするか?



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