高畑勲さんを悼んで


 先週の4月5日、高畑勲さんが亡くなられた。
 82歳だったそうで、もうそんなお歳だったのかと意外な気がした。
 高畑さんとは『火垂るの墓』を監督された時に、一度だけお会いしたことがある。
 控え目な方で、その時も挨拶程度にしか言葉を交わさなかったが、私が最も尊敬するアニメーション監督だった。

 有能な方がお亡くなりになると、よく「惜しい人を亡くした」と社交辞令のような言葉が使われるが、訃報を聞いて思わずこの言葉が口をついた。
 本当に惜しい人が亡くなった。高畑さんの新しい作品が見られなくなるのは、本当に残念だ。

 高畑さんについては、東京大学仏文科を出て東映動画に入社され、長年アニメーションの演出をされてきたこと以外はあまり知らなかった。
 9歳の時に岡山で終戦を迎えられ、岡山大空襲を体験されたという話を知って、改めて『火垂るの墓』に描かれた高畑さんの戦争への想いと、高畑さんの世界観の一端を理解できたような気がする。

 私が初めて高畑勲という監督を意識したのは、1981年に公開された劇場版『じゃりン子チエ』だった。
 青年誌に連載されていた漫画が原作で、主人公はホルモン焼き屋の小学生の女の子。父親が遊び人のために代わって店を切り盛りし、家族や町の大人たち、学校の悪友たちとの交歓を描くコメディとなっている。 
 
 チエの声をタレントの中山千夏さんが演じ、劇場版では関西のお笑い芸人と俳優がほかのキャラクターの声を担当した。
 当時、アニメーションでは専門の声優が演じるのが当たり前で、個性が強い上にアテレコに不慣れな人たちの起用には批判的な意見も多かった。

 専門の声優なら器用に演じる。
 しかし、お笑い芸人たちの演技には大阪人特有のバイタリティがあり、ホルモン焼き屋を舞台にした活気ある『じゃりン子チエ』の世界観に上手く嵌っていると感じた。

 この作品で私がもっとも感心したのは、チエがホルモンを焼くガスコンロにマッチで点火した後に、マッチ棒を手慣れた手つきでひょいと振って火を消すシーンで、そこに父親に代わってホルモン焼き屋を営む少女の生活感とリアリティが凝縮されていた。
 
 実写の映画で俳優が演じても、このような生活感が出せるとは限らない。
 手書きのアニメーションだからこそできる演出、動きなのだが、このような演出が誰にでもできるわけではない。
 このシーンを見た瞬間、私は高畑勲という人の比類なき才能を知った。

 アニメーションに限らず、劇映画の多くはストーリーで語られる。
 エンタテイメントもあればヒューマンドラマもあって、私たちはそのストーリーを楽しんだり感動したりするわけだが、そこに哲学を語れる人が作家なのだろうと思う。
 日本のアニメーション監督で、高畑勲のほかに作家と呼べる人を私は知らない。

 寡作な人で、2013年の『かぐや姫の物語』が最後の監督作品となった。
 高畑さんが関わった作品としては、2016年のマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督の『レッドタートル ある島の物語』が最後となった。
 どちらも感銘を受ける作品だった。

3.11について書く。なぜ原発はやめられないのか?(下)



 原発が本当に安価なのかという点については、廃炉や核廃棄物処理、事故対策費用を考えれば、未来への費用の先送りであり、トータルでは決して安価ではないという反論もある。
 しかし、ここでは一応安価ということにしておこう。

 電気代が高くなって困るのは誰か?
 一般庶民だという言い方がよくされるが、実際、電気代が上がって困る人もいる。
 しかし、インフレ2%を政策目標にしていながら、原発を維持するのは電気代を上げないためという理由もない。

 それよりも、電気代値上げと原発リスクを秤にかけて、それでも電気代を選ぶ人がどれほどいるのだろう。
 命の安全への保険料だと考えれば、安いものではないか。

 電気代が高くなって困るのは、生産コストが上昇する経済界だ。
 しかし、それだって製品価格に転嫁すればいいわけで、転嫁できずに泣きを見る中小や零細企業にしたって、命の安全と引き換えてまで反対する人がどれだけいるのだろう。
 原発事故が起きて明日からの生活に困窮するのが、大企業ではなく原発立地地域の中小や零細企業、自営業者だというのは、福島第一原発事故で見てきたことではないか。

 つまり電気代が高くなるからと、代わりに命を差し出す人はいない。
 命を差し出しても電気代が安い方が良いと考えるのは、目先の利益しか見ない企業経営者くらいしかいない。
 
 さてここまで考えて、なぜ政府と現内閣は原発維持をやめないのかという疑問に突き当たる。
 その理由には2つあると考えている。

 一つは、5年前の「原発ゼロは幻か? ”落とし所”と”現実論”」に書いた電力会社の固定資産償却の問題。
 廃炉を決定すれば電力会社は原子力関連の固定資産の償却を迫られ、投資資金の回収ができなくなるばかりか、資本が悪化し会社存続の危機に陥る。

 もう一つは、立地自治体のほか、原子力関連産業に原発がもたらす経済効果。
 日本原子力産業協会「原子力発電に係る産業動向調査2016」によれば、原子力関係従業者5万人、2兆円の産業規模となっている。
 別の調査では原子力産業に従事する者8万名以上となっているので、裾野まで含めると原子力産業によってもたらされる経済効果は、もっと大きいかもしれない。
 ちなみに日本の国民総生産は500兆円規模。

 こうした人たち、企業には生活が懸かっている。
 命と引き換えなければならない生活が懸かっている。
 取り敢えず原発は安全だということにしておこう、原発は安全だとしておきたい生活が懸かっている。

 こうした企業や人に直接間接にコミットしている経済界、役人、政治家が原発推進の旗を掲げる。
 電力会社だって潰すわけにはいかない。
 有能な政治家がいればこうした問題の一つ一つに対策を立て解決していくのだろうが、残念ながら日本には有能な政治家がいないのは、今の日本の政治情況を見れば明らか・・・
 と言ったら、俺がいる! と小泉純一郎元首相が声を上げるだろうか。

(写真は、事故直後の2011年3月16日に撮影された福島第一原子力発電所4号機。 出典:東京電力ホールディングス)

またしても、カレンダーのダビデ像の股間

IMG_0538 (300x400)
 年初に「カレンダーのダビデ像の股間」について書いた。
 我が家のトイレには便座の正面にカレンダーが飾ってあるのだが、今年のカレンダーは”Florence Masterpieces”(フィレンツェの名作)で、その1月の写真がアカデミア美術館のミケランジェロのダビデ像で、新年早々、ダビデ像の股間が目に飛び込んできたというものだった。

 2月はメディチ・リッカルディ宮殿のべノッツォ・ゴッツォリのフレスコ画で、イエス生誕を知って東方三賢者が馬に乗って旅をする様子を描いたもので、すこぶる穏当なものだった。

 さて、3月はまたしてもダビデ像の全裸で、今度はバルジェロ美術館のドナテッロのブロンズ像。
 ゴリアテを倒して、その首を左足で踏みつけている様子だとされ、右手の剣はゴリアテから奪ったもの、頭の冑には月桂樹が巻かれている。

 ゴリアテのエピソードは以前、ユダヤ神話で読んだことがあるが、まあいい。話は、ダビデの股間・・・というよりも。
 ミケランジェロのダビデ像とは、どこか印象が違う。
 作家が違うのだから当たり前だが、何かが違う。股間はともかく、体つきがどこか女性的。

 二の腕も柔らかそうなら太股も肉感的。
 とりわけ下腹の膨らみが女性っぽいと、自分の突き出た腹を見ながら思う。
 胸だって少女っぽいではないか。

 割礼を受けていない股間もどこか遠慮がちで、ゴリアテを踏み敷く勇姿とは裏腹に、ダビデの裸体の中性的な印象が日毎に深まる。
 なんせ、毎日拝んでいるから。

 さて、今回はオチがない。
 本当は3.11について書こうと思ったが、ダビデの裸身に魅入ってしまった。
 続きは、近日中──



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