東京地名考─東京の難読地名といえば日暮里?(下)

小田原北条家所領役帳
小田原衆所領役帳。
一番右に「四拾五貫文 〃(江戸)新堀」

 日暮里のルーツをたどると、もとは新堀という地名で、江戸中期になって「にっぽり」の読みに日暮里の字が当てられるようになったといわれている。

 「にっぽり」の名が初めて登場するのは、文安5年(1448)の「熊野領豊嶋年貢目録」に記載された「三百文 につほり妙円」とされている。「目録」には熊野那智大社に年貢を納めた者の名が記されており、「につほり」は地名と考えられる。
 永禄2年(1559)の「小田原衆所領役帳」には遠山弥九郎の所領として「四拾五貫文 江戸新堀」が記されていて、初めて新堀の文字が見える。「熊野領豊嶋年貢目録」はこれより約100年前なので、「にっぽり」に新堀の文字が当てられたと考えるのが自然だろう。

 寛文11年(1671)の新板江戸外絵図には、道灌山付近に「ニツホリ城アト」の文字が見える。
 『新編武蔵風土記稿』には、遠山弥九郎の館があり新たに土塁と堀をめぐらした地を新堀と号したと書かれ、また『紫の一本』『江戸名所図会』は、新堀には太田道灌の出城があったと記していて、新板江戸外絵図の城跡はこれを指している。

 延宝8年(1680)『江戸方角安見図鑑』は「にっぽり」を入堀とも表記、享保2年(1717)『分間江戸大絵図』には新堀村と記されている。
 江戸中期の江戸図には「につほり」または「新堀」の表記が続く。
 江戸図に「日暮里」の表記が登場するのは江戸中期になってからで、明和8年(1771)の江戸図には道灌山の東に日暮里の文字が見える。また寛政9年(1797)『江戸安見絵図』には、道灌山と並んで「ひぐらし」と書かれている。

            
新板江戸外絵図_本郷
新板江戸外絵図。諏訪大明神の北にニツホリ城アト
明和江戸図
明和江戸図。諏訪明神の東に日暮里
国土地理院
現在の西日暮里3丁目周辺(出典:国土地理院)
DSC00443.jpg
道灌山。右手がJR西日暮里駅

 『江戸名所図会』には、日暮里と書くようになったのは寛延(1748-51)の頃からとあり、江戸図に登場する時期とも一致している。
 新堀に日暮里の字が当てられたことから「にっぽり」と読んだが、のちに「ひぐらしのさと」と呼ぶようになったと『新編江戸志』等に書かれている。

 『江戸名所図会』は、日暮里の範囲を「感応寺裏門のあたりより道灌山を界とす」と書いている。『紫の一本』の「谷中の西北」、また『江戸名所図会』の「日暮里惣図」からも、現在の西日暮里3丁目に相当する日暮里駅から西日暮里駅にかけての台地が日暮里と呼ばれていた。

 村名としての日暮里村が誕生するのは明治11年(1878)で、それ以前は新堀村と表記されている。
 明治12年(1879)『東京全図』、明治14年(1881)『東京御絵図』などから、日暮里駅から西日暮里駅にかけての台地と道灌山の周縁、その東に広がる低地が新堀村だったことがわかる。

 『望海毎談』は、「入堀(にっぽり)と云所、今の谷中の北なる山を呼て、春は花見とて野がけの遊山に人々の志ざす所なり。其山の東の麓の村を日暮里村といふ。今日暮しの里と名付し處なり」と書いている。

 「にっぽり」の地名の由来については諸説あるが、定説はない。『新編武蔵風土記稿』は遠山弥九郎の居館があり新たに堀をつくったからとし、『紫の一本』は太田道灌の出城だとしている。
 現在、開成学園のある道灌山遺跡からは縄文から弥生の住居址・環濠、平安時代の住居址等が発見されており、地名の由来に関係しているかもしれない。

 また『武蔵国志料』は、新堀は新墾(にいばり)のことで、新たに田畑を開墾することをいい、『万葉集』にも出てくる言葉だとしている。
 「にいぼり」または「にいばり」が訛って、「にっぽり」と呼ばれるようになったというわけだ。


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