ベトナム・ホーチミン市を旅して(9)サイゴンの夜


マジェスティックホテルの朝食ビュッフェ(テラス席)

 マジェスティックホテルに滞在中は、朝食のビュッフェを除けば、夕食をホテルで食べることはしなかった。
 料理のグレードを別にすれば、ホテルのダイニングで食べる食事はやはり高い。同行した連れ合いが現地のレストランに行きたがるということもあり、大抵は街を歩きながら美味しそうな店に飛び込む。
 「ベトナム・ホーチミン市を旅して(3)ベトナムコーヒー」に写真を載せたように、メニューを品定めして片言の英語と身振り手振りで注文する。

 時には思いがけない料理が出てきたりもするが、それも旅の楽しさの一つ。現地の人に交じって現地の料理を食べる。
 例えて言えば、日本に旅行に来た外国人が、帝国ホテルに泊まって帝国ホテルのレストランにしか行かなかったとしよう。
 帝国ホテルには日本料理もあれば中国料理もある。日本料理だって懐石から鉄板焼き、天麩羅、寿司といろいろある。
 だが、そんな外国人旅行者がいれば、一言いいたくなるはずだ。銀座に行けばもっといろいろなお店があって楽しい食事ができますよ、と。
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サイゴン川を見下ろしての朝食
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バンドの生演奏が入るマジェスティックホテルのバー
 
 それでも折角コロニアル様式のホテルに泊まったのだからと、最終日の晩にサイゴン川を見下ろせるバーに行った。
 アルコール類だけでなくソフトドリンクもあり、バンドの生演奏も聴ける。カクテルなら1ドリンクで1200円程度。宿泊客以外の人も結構いた。

 窓はなく、屋根のついたテラスのようなバーで、川に面したカウンター席に案内されたので、風に吹かれながら夜の帳の下りたサイゴン川に停泊する船の灯、郊外に広がるサイゴンの街のビルの灯りを眺めることができた。

 サイゴン川の橋を渡って郊外に向かう車の灯の列が次第に遠ざかっていく。ホテルの前の通りの車の音も少なくなり、街の様々な音が混じり合って潮騒のように聞こえる。遠ざかっていく潮騒の中に、時折、救急車のサイレンの音が混じる。
 穏やかな夜。街は安らかな眠りにつこうとしている。

 サイゴンの夜は平和のベールに包まれていた。
 遠く広がる暗闇に目を凝らしながら、その暗幕の中に半世紀前の戦争を映し出そうとする。半世紀前の戦場を思い浮かべようとする。
 しかし上手く想像することができなかった。
 戦争は遠い過去となった。それでいいのだと思うと、妙に感傷的になり、いつまでも暗闇を見続けるのだった。
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 翌日、夜の飛行機の便まで時間があったので、サイゴンの街を歩いた。
 その日は、ユニクロのベトナム1号店がホーチミン市に開店した日で、店の前にできた行列が道路を渡って中央郵便局前まで続いていた。
 前日前夜祭をやっていて、たまたま通りかかった際にユニクロの柳井社長をお見掛けした。
 そういえば6年前に上海を訪れた際も、ユニクロ上海店の開店に出くわした。別に図ったわけではないが、ユニクロとは妙に縁がある。
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ホーチミン市にオープンしたユニクロ
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人民委員会庁舎前広場のサッカーのライブビューに集まる人々
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高島屋の入るサイゴン・センターのクリスマス・ツリー
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機械部品や工具、計器類など様々な物を売るヤンシン市場
 
 ベトナムのサッカー人気は凄い。「ベトナム・ホーチミン市を旅して(2)貧しさを分かち合う社会主義」に書いたが、人民委員会庁舎前の広場では夕方になるとサッカーのライブビューに大勢の人が集まる。
 試合が終わると国旗を掲げたバイクを連ねて、まるでデモ行進のように道路に繰り出し大渋滞を引き起こす。前夜マジェスティックホテルの前で、この大行進を見た。
 ベトナムにはVリーグというプロサッカーリーグがあるそうで、FIFAランキングではまだこれからだが、国民的人気は日本を遥かに上回っている。

 サイゴンの中心街から外れたところにヤンシン市場がある。
 「ベトナム・ホーチミン市を旅して(3)ベトナムコーヒー」で紹介したベンタイン市場が食料品や土産物を中心に観光客相手なのに対し、ヤンシン市場は足を運ぶ観光客がほとんどいない。
 中心街を外れていて、近くにはスラムっぽいところもあるので、若干近寄り難いのかもしれない。実際、一緒に歩いた連れ合いはやや怯んだ風でもあった。

 一言でいえば、日本が高度成長期であった頃の秋葉原に近いだろうか。
 ガイドブックなどではミリタリーグッズを売っている市場と書かれているが、実際には周辺を含めて電気部品や機械部品、工具や計器類を売っている店も多く、成長期のベトナムを支えているように見えた。
 メコン川ツアーでミトーに行くバスの車窓からは、バイパス沿いにエンジンなどバイク部品を売る店が多く見られた。

 ヤンシン市場とその周辺には、発展途上にある国の人々の活気があった。生活を向上させるために必要な物が並んでいた。
 それはかつての秋葉原と同じだった。戦後の秋葉原には、人々の生活を向上させるために必要な科学技術が店先に並んでいた。
 少年だった頃の秋葉原を思い出すと、懐かしさがこみ上げてきた。

 預けていた荷物を取りにホテルに戻る。ベルボーイに空港までのタクシーを呼んでもらう。
 この国はこれから発展していく。戦禍を乗り越えた日本がそうであったように、人々が幸せに暮らせる国に、そう願ってやまない。


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