東京地名考─桜田門にはたして桜は咲いていたのか?(上)

大東京最新明細地圖1932(外桜田町) (367x275)
昭和初期の外櫻田町付近の地図

 2年前、「有楽町と織田有楽斎、数寄屋橋と数寄屋坊主」を書いた時に、いつか書こうと思っていたことがあった。しかし、きっかけがないとなかなか書かないもので、あっという間に2年が経ってしまった。

 有楽町、数寄屋橋とくれば八重洲で、2年前にも予告もしたのだが、今回は桜田。八重洲はまたいつか・・・って、また2年後か?
 なぜ、今回は桜田かというと、もうすぐ桜の季節だからである。理由はそれだけ。

 東京の桜のつく地名はいくつかあって、世田谷区桜、桜丘、桜新町、桜上水、練馬区桜台、渋谷区桜丘、板橋区桜川、足立区千住桜木町がある。
 で、桜田・・・桜田なんて地名はないじゃないか! どこにあるんだ?
 あるんです、東京のど真ん中、千代田区に。

 桜田は、今は消滅した地名だが、1938年までは、現在の霞が関2丁目・永田町1丁目に外桜田町という町名があった。
江戸砂子(桜田) (2) (285x367)
御府内備考(櫻田) (2) (277x367)
上:江戸砂子、下:御府内備考の櫻田の項

 桜田の地名の歴史は古く、平安時代の荏原郡桜田郷に遡る。
 現在の虎ノ門から溜池・愛宕・芝公園にかけてに桜田郷があったといわれ、江戸砂子には「山下御門幸橋の内より、虎御門の外までの総名也」と書かれている。山下御門・幸橋は現在の帝国ホテル・新橋第一ホテルあたり。
 御府内備考には、「桜田は、西丸下より愛宕芝辺まで及びたる郷名と見へたり、和名抄荏原郡の郷名に桜田と載す」とある。西丸は現在の皇居・宮殿のある場所。

 桜田という地名は、現在もかすかに残っている。皇居にある桜田門がそれ。井伊直弼が暗殺された桜田門外の変で知られる。桜田門から半蔵門にかけての内濠は、桜田濠。
 この向かいにあるのが警視庁で、符牒で桜田門と呼ばれる。
 かつての江戸城の桜田門は、地名の桜田に由来し、現在では皇居に桜田の名を残すのみとなっている。

 江戸砂子には、桜の木が多かったから桜田と呼ばれたようなことが書かれているが、おそらく違う。奈良の吉野山の千本桜も長い年月の植樹の結果で、自然林で桜が群生する話を聞かない。
 桜田は桜の木とは関係なく、地名学的には狭倉田ではないかと考えられている。(つづく)

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