東京地名考─消えた地名・護持院ヶ原(上)

拝殿IMG_8376 (367x275)
筑波山神社拝殿(中禅寺跡)

 4月中旬、筑波山にハイキングに行ってきた。
 ケーブルカーやロープウェイでも登れるのだが、普段の運動不足解消も兼ねて筑波山神社入口から登り始め、女体山を経て男体山、筑波山神社入口へ下山した。
 おかげで数日間は筋肉痛で、階段の上り下りに難儀した。

 出身校の小学校の佐藤春夫作詞の校歌にも筑波山が歌われていて、子供のころから幾度もその山影を遠望しているが、登るのは今回が初めてだった。
 女体山の山頂近くは巨岩・奇岩が列をなしていて、他の山では見られないような山容で、もとは火山だったのかとも思ったが、そうではなく深成岩が隆起してできた山なのだという。

 筑波山神社入口まで来て思い出したのだが、この神社は文京区にある皇族用墓地、豊島岡墓地と縁がある。
 それを説明するためには江戸時代初期にまで遡らなければならない。
男体IMG_8372 (367x275)
男体山山頂の本殿

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女体山山頂の本殿

 筑波山神社の祭神は筑波男神と筑波女神で、山岳信仰の神として古代にまで遡ることができる。
 筑波山中腹にある筑波山神社は明治8年に造営されたもので、それまでここには中禅寺という寺があった。
 筑波山神社の本殿は、男体山と女体山山頂にあってそれぞれ筑波男神と筑波女神を祀っていて、中腹にある社殿は、拝殿という位置づけになっている。

 つまり、中腹にある拝殿は筑波山神社では最も大きな建物で境内も広いが、本来は中禅寺境内であり、明治維新の廃仏毀釈で中禅寺が廃寺となったために筑波山神社境内に編入されたものということになる。
 知足院(中禅寺)が開かれたのは、奈良時代から平安時代にかけてとされる。

 修験道が盛んとなる中世にかけて筑波山も山岳霊場となり、仏教と山岳信仰の神が混淆していくが、江戸時代になると知足院は徳川家康の手厚い庇護を受けることになる。
 理由は簡単で、筑波山が江戸の北東、すなわち陰陽道の鬼門に当ったからで、知足院は江戸を守護するための徳川幕府の祈願所となった。

 家康は知足院を再興するために500石を寄進し、大和長谷寺から梅心院宥俊を呼んで知足院の別当とした。
 この時、筑波山の俗別当であった筑波氏との抗争があったが、幕府の裁許によって追放されたという。

 宥俊の跡を継いだのが同じ大和長谷寺で宥俊の弟子であった光誉で、慶長15年(1610)、幕府から江戸に寺領を拝領して知足院の護摩堂を建立し、江戸常府を命じられた。
 この寺は江戸知足院と呼ばれ、江戸白銀町(現在の千代田区岩本町付近)にあったが、やはり江戸城の北東、鬼門に位置していて、江戸城護持の祈禱を命じられた。(続く)


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