忖度について忖度する(上)

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 「森友学園」問題の今後の進展次第では、早くも今年の流行語大賞候補になりそうなのが、「忖度」である。

 忖度・・・比較的よく使う言葉だが、改めてパソコンで漢字変換してみると、しみじみと字面を眺めてしまう。
 ソンタクを漢字で書けと言われたら、字画は少ないが書けない。ほう、こんな字だったっけ。

 ソンは、立心偏に寸。
 立心偏は心、寸は手の指1本のことで、指をそっと置いて長さや脈を測るように、そっと気持ちを思いやること。

 忖度の度は、手尺で長さを測ること。タクと読む場合は、転じて、心の中で推し量る、見当をつけるという意味になる。
 忖も度も同じ意味で、他人の気持ちや考えをそっと推し量ること。

 「忖度する」をWeblio類語辞書で調べると、「相手の立場を考えて物事を行うこと」という語義の後に、次のような言い換えが並ぶ。
 ──気をまわす、気づかいをする、思いをくみ取る、気を利かす、気持ちを推し量る

 私が海外旅行から帰ったとしよう。
 「お刺身買ってあるわよ。お風呂も沸いてるけど、どちらを先にする?」
 連れ合いがそう答えれば、それも忖度だ。

 海外のホテルではゆっくり風呂に入ることも出来なかったろう。毎日、シャワーだったかもしれない。きっと、湯船にどっぷり浸かって疲れを癒したいに違いない。
 食事だって洋食ばかりで飽きているに違いない。日本人なら、日本に帰ってまず食べたいのは刺身だ。

 ちなみに、私が海外旅行から帰って最初に食べたいのは冷たい蕎麦。
 齟齬は往々にしてあるものの、連れ合いが私の心を推し量った、忖度に違いはない。
 私など、連れ合いに対する忖度は日に十回以上はあるし、子どもに対する忖度も昔から。
 忖度は日常に溢れている。

 忖度で注目を集めている安倍夫妻の大好きな「おもてなし」など、忖度の際たるもので、忖度の出来ない人におもてなしなんかできるわけがない。
 これまた安倍夫妻の大好きな教育勅語にしても、「爾(なんじ)臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦󠄁相和シ朋友相信シ恭儉(きょうけん)己レヲ持シ博󠄁愛衆ニ及」ぼすためには、やはり忖度は必要。

きょう‐けん【恭倹】
人に対してはうやうやしく、自分自身は慎み深く振る舞うこと。(大辞泉)

 会社や役所などの組織に生きる人間とって忖度が不可欠なのは言わずもがなで、首相夫人の付き人となった役人もおそらく優秀な人で、忖度上手だったから付き人が務まったといえる。

 では、美しい国ニッポンの美風である忖度は、いつからあったのか? 以下、次号。

東京都庁で学ぶ伏魔殿&ブラックボックス

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 伏魔殿という言葉がある。大辞林には次のように説明されている。

ふくまでん【伏魔殿】
①魔物が隠れている殿堂。
②陰謀や悪事が常に行われている所。悪の根城。

 出典は明代の中国伝奇小説『水滸伝』で、北宋の時代、道教の本山・龍虎山に建てられた堂宇の一つに「伏魔之殿」が出てくる。
 代々の老師・天師が魔王を閉じ込めてきた建物だと説明されているが、洪進という官僚が封印を解いてしまい、妖魔が放たれてしまう。
 役人が緘口令を敷いて、不祥事を隠蔽してしまうのは世の倣いで、洪進もまたこれを隠して山を下りてしまう。

 最近の伏魔殿の代名詞は東京都庁だが、『水滸伝』に学べば、伏魔殿に潜んでいるのは都庁の役人ではなく、ほかに魔物がいるということで、役人は魔物が世に蔓延るのを隠蔽していただけに過ぎないということになる。
 では魔物は一体誰か? ということになるが、豊洲市場移転や東京オリンピック招致の裏で利権を貪っていた連中がいたのかもしれないし、それに政治家が絡んでいたのかもしれない・・・などと、ワイドショーのように想像を逞しくしてしまう。

 これぞ、都知事選挙で、小池百合子さんが言っていたブラックボックスなのか?

ブラックボックス【black box】
①機能は知られているが,内部構造が不明の装置。電子回路などで,内部構造を問題にせずに入力と出力,原因と結果だけを扱う場合の,その過程や回路・装置。
②転じて,処理過程が部外者には不明な仕組みや機構。また,他人が簡単には真似のできない専門的な技術領域。(大辞泉)

 魔物は暗闇に棲むものと相場が決まっていて、魔女や魔王たちが集まるサバトの集会、ワルプルギスは夜に開かれる。
 ローマ神話の月の女神ディアナは、魔女の女神ともされ、夜の象徴。
 イザナギがイザナミに逢いに行った黄泉の国も地下にあり、逃げるイザナギを魔物たちが追ってくる。

 『水滸伝』の魔物たちも地下の深い穴に閉じ込められていて、伏魔殿もまたブラックボックス。
 そういえば、豊洲市場の地下にもブラックボックスがあったっけ。

 西新宿に空しく聳える、丹下健三設計の東京都庁。
 伏魔殿、ブラックボックスにすむ魔物たちは、ここから地上に放たれたというわけか。
 さて、伏魔殿・ブラックボックスの魔物たちの正体やいかに?
 小池百合子の快刀乱麻、乞うご期待・・・なるか?

(写真は、逢魔が刻の伏魔殿、または影に浮かぶブラックボックス)

最近ブームの御朱印帳はスタンプラリーか?(下)

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 最近、寺社に行くと、御朱印をもらいに来ている人をよく見かける。
 浅草寺には、御朱印を受けに来る人たちに対して、心得を書いた掲示が貼りだされている。曰く、

 ──お経も書写せず、あるいはお堂に入ってお参りもしないで、ただご朱印だけを集めて歩くということでは、本来の尊い意義を無視してしまうことになり、あるべき姿から離れてしまいます。

 お参りもせずに御朱印だけを受ける人がいるとは驚きだが、最近は御朱印ガールなどというのもいるらしい。
 ちなみにTwitterで「御朱印ガール」を検索してみると、写真・動画入りで御朱印ガールたちのつぶやきが並んでいる。

 御朱印ガールたちが参拝もせずに御朱印だけを集めていると言っているわけではなく、ちゃんとお詣りして宗教心も篤い人が多いのだろうと思う。
 見かけで判断するのが正しいわけではなく、もしかしたらリュックを背負って寺社巡りをしているオジサンが、参拝もせずに御朱印だけを集めているのかもしれない。

 東京で最も歴史のある浅草寺は、御朱印を受ける人も多くて、正直なところ困惑して節度を求めているように見受けられるが、寺社側はただ迷惑をしているだけかというと、そうともいえない。

 例えば、毎年初詣客では首都圏で1、2位を争う川崎大師では、5か所で9種類の御朱印を用意している。成田山新勝寺は4か所5種類。
 大抵の寺社が1~2種類の朱印しかないのに比べ、ホームページにも載せて商売熱心なのがわかる。

 最近は、観光のために新たに○○七福神を設定しているところもあって、七福神めぐり専用の御朱印帳まで販売されている。
 東武鉄道などは「日光・浅草・上野御朱印ラリー」などというものまで企画している。
 ホームページには御朱印の意味について書かれてなく、「素敵な賞品もご用意しているので、日光旅を楽しみながら、御朱印集めを初めてみませんか」とは、東照大権現もさぞかしお嘆きのことだろう。
 もちろん、このラリーに浅草寺は参加していない。
 似たような観光企画は地方の寺社でも行われていて、御朱印集めがスタンプラリーだと揶揄されるのも仕方がない。

スタンプラリー
〔和 stamp+rally〕一定の経路を巡って各ポイントに置いてあるスタンプを集めるゲーム。(大辞林)

 亡くなった母は、昔、旅行には必ず御朱印帳を携行して、参詣した寺で御朱印を受けていた。
 不幸なことにその後長患いとなり、御朱印を受けに旅行にも出られなくなったのだが、宗教心の欠片くらいは持ち合わせている私としては、コレクション感覚で御朱印集めをしているという話を聞くと、宗教心以前のこととして、悲しいような寂しい気持ちになる。


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